「アルデバラーン?」 シンと静まった金牛宮。 の穏やかな声が響いても、誰も答える気配は無い。 (…裏かしら?) 今日は訓練は休みの筈、とアイオリアにも聞いていた。 は庭園が広がる宮の裏へと回ってみる事にした。 サァァ、と新緑の香りを乗せた風が舞う。 頬に当たる風は心地良く、つい眠気を誘ってしまう程だがそんな事をしている暇は無い。 ──早く、伝えたいのだ。 「あ、アルデバランー!」 漸く見つけた姿は、庭園の真ん中に在った。 傍に書物も何も無い所を見ると、何をしに此処に居るのかが不思議に思う所だが。 「おお、か。どうしたのだ?」 「どうしたもこうしたも……」 は苦笑を浮かべながら、アルデバランの隣へと腰を下ろす。 青年の大きな体躯によって風が幾分遮られてしまうが、今はそれを残念に思う事は無い。 「…はい、お誕生日おめでとう」 そう言ってが差し出したのは、シンプルに包装された小さな箱。 の掌の上でも小さめだった其れは、青年の掌の上では更に小さく見えてしまう。 「覚えていたのか…」 「…余り嬉しくなさそうね?」 「いや、吃驚してしまって……有難う」 慌てた様に照れ臭さを滲み出させた笑みには堪らずその大きな身体へと抱き付く。 トクン、トクンと規則正しく打つ鼓動の音が、に伝わる。 そっと背に回された大きな掌が合図に、二人は口付けを交わす。 「ん…っ、アルデ…バラン」 唇が離れ、また重ねられ。 その合間に愛しさを込めて、名を呼べば穏やかに笑む青年の瞳。 その瞳からは似つかぬ、激情の口付けには息が絶え絶えになり青年の身体に凭れ掛かっていた。 「、開けても良いか?」 「あ、うん…気に入るか解らないけど…」 無骨な指先で丁寧に開けられたラッピングと箱の中に入っていたのは、革のブレスレット。 普段からそういった類を身に付けない青年だが、困る所か青年はある一点を見、それは喜びへと変わる。 「…お前と同じ物か?」 「…ふふっ、もうバレちゃった?」 見れば、の細い手首にも同じデザインの物が付けられている。 ─そんな物を貰い、喜ばない男が何処に居ようか。 「また来年も、再来年もずっと…祝うから楽しみにしていてね」 そう柔らかく笑んだの表情は、新緑の風よりも心地良く青年の心に吹き込む。 青年は、革に刻まれたもう一つの言葉に堪らない愛情を抑えきれずに、再度の口付けを。 "love that is eternal for you" (貴方に永久の愛を) fin.