赤い陽が落ちる 夜の静寂を纏う為に… 昼の喧騒の終わりを最後に告げようと 太陽は赤く燃え世界を染める 「ねぇ、バルフレア?」 「……あぁ?」 港町バーフォンハイム。 昼間は街全体が活気付いている此処も夕日が落ちる頃になると落ち着いた街へと変わる。 この街を統括するレダスの屋敷でヤクトでも飛べるという飛行石を譲って貰い屋敷を出、宿へと向かおうとする皆に 『先に取り付けて来る』 と告げ、一人でターミナルに向かおうとしたバルフレアについて来たのは良いものの─… 「さっきから悩んでる顔してる」 「…気の所為だろ」 器用な手付きで私には解らない仕組みのシュトラールにさっきの飛行石を取り付けている。 その顔はメンテナンスをする時のソレでは無く、何か悩んでいる様な顔。 …その原因は多分…… 「………ドクターシドの事?」 「……………」 「………バル…」 「…終わった。行くぞ」 「えっ?あ、うん」 使っていた工具を素早く薄い鉄で出来た工具箱に仕舞い、スタスタと足早にシュトラールのハッチから外へ出ようとする彼を追い掛ける。 早いペースで歩き続けるバルフレアを追い掛けて辿り着いたのは酒場・白波亭の前の波止場。 視界に一杯の夕日に赤く染められた海と、水平線の向こうに真っ赤に燃えた太陽が半分程その身を隠している。 「…キレー…」 思わず出た言葉。 最近、こんな景色を見る暇なんて無かった気がする。 ふと隣を見ると… 「……バル……」 「……そうだな」 今にも泣きそうな、でも目を細め潤む瞳を誤魔化し必死に我慢しているその表情は私の言葉を奪い、胸が締め付けられる。 「…何処でどう間違っちまったんだろうな。…………アイツは」 そう呟くと瞼を伏せ。 考えるよりも先に腕を伸ばし、彼を抱きしめていた。 「バル…………今だけ泣いて良いんだよ」 「………」 「ずっと思い詰めた顔してる。そんな顔、していて欲しくないの」 「………」 「知ってるよ?ヴァン達の前では弱音吐けないの。常に余裕見せて……それじゃバルが壊れちゃう。だからせめて私の前では…自然なバルで居て?」 言葉を紡ぎ終わった途端に震える彼の肩。 声を殺し、私の肩に顔を埋めて。 苦しさを和らげてあげようと、ゆっくりとしたリズムで背中を軽く叩いてあげる。 そうして、どれだけの時間が経ったんだろう。 気付くと辺りは暗くて、白波亭から漏れる明かりと賑やかな声。 右を見れば、灰色の波とその音で夜を強調する。 不意に肩から温もりが離れ、顔を上げれば何時もの彼の表情。 「……有難う」 はっきりとは見えないけど、柔らかく笑むバルフレアは歳相応に見えて。 どう致しまして、と言葉には出さずに彼の両肩に手を置き踵を上げて触れるだけのキスをする。 「また……辛くなったら、思い詰めた顔をする前に私の肩を貸してあげる」 「あぁ…」 「泣く事は恥ずかしい事じゃないから……ね?」 バルフレアから自然と零れる柔らかい表情。 つられて笑むと彼の唇が私の額へと落とされる。 「には感謝させられっ放しだぜ」 「…え?」 「いいや、こっちの話だ。…さて、宿に戻るか……夕飯食い損ねるぞ」 「だね……お腹空いちゃった」 クスクスと笑いながら頷き、後ろを振り返る。 バルフレアの左手が私の前に伸ばされ、それに右手を添えると丁度良い加減で握られる。 「ねぇ、バル?」 「何だ?」 「…大好き」 ねぇ、知ってる? 太陽は動を、月は静を表しているって。 夕日は黒い帳を下ろしながら動を静めていってくれるって。 きっと人の心も……静めてくれるよね。 また…泣きたくなったら肩を貸してあげる。 今日と同じ、夕焼けの下で─…。 fin.