今夜もまた風が鳴く。
尽きぬ戦乱で失われた命を尊ぶ様に、儚げに。
陽の暖かさも感じられぬ冷たい風に身を晒しながら、は薄暗い無機質な地平線から視線を外せずにいた。
「またそうやって朝まで居るつもりか?」
苛立しさを微塵も隠そうとしない低い声が背中から投げ掛けられる。
仄かな月明かりを浴びる真っ赤な髪色は絶えず持ち主の野蛮さを現す様に風に靡かせるD・Sの四天王の一角、ガイン・エスペランザ。
身体の至る所に埋め込まれた金属の球体が目の前に映し出されたと思った刹那、己の身体を後ろへと引っ張られる。
「…今日も、沢山の人を殺したのね…」
己を抱き締める筋肉質の太い腕からは微かに血の匂いがする。
己の腕の数倍は有るだろう、ガインの腕はその気になればこの細い首が簡単に圧し折られてしまうだろう─そんな風に人事の様に巡らせていた思考は心地良い低音によって遮られた。
「
魂喰らいに全て喰らわせてやった。…俺の野望を知らぬ訳が無いだろう?」
囁かれた言葉と共にゾクリと躰を震わす。
その白く細い首筋に生温い体温を纏った舌が下から上へと這う。
顎をなぞり、辿り着いた唇へと噛み付き、冷たさを感じるの舌を絡め取った猛々しい舌は更に奥を強請るかの様に咥内を掻き乱す。
「…ん……っは…」
息継ぎも儘成らぬ激情の接吻には目の前の肩にしがみ付く。
─今夜は乗り気だな…─
そうガインの瞳は更に熱を宿し、度重なる戦によって生命が生まれぬ土になってしまった枯れ果てた地へを押し倒す。
「…今日は機嫌が良いじゃねぇか…」
スル、と纏っていた薄めの衣服を脱がされる。
身に当たる風の冷たさに、全身の筋肉を硬くさせると自分を見下ろす鋭利な瞳が愉快そうに細められ笑う。
「…直に熱くならぁ…」
胸へと下ろされる吐息には身を委ねる様に双眸を閉じる。
この獰猛な愛しい男の背中に腕を回しながら与えられる極上の快楽に身を捩じらせ、強請り、溺れる。
──願うならば。
無謀な野望等捨てて、二人で何処かへ行きたいと。─
は己に降り注ぐ熱を感じ躰を震わせながら、静かに思った─。
fin.