ソーヘン地下宮殿。
薄暗い洞窟を通り、辿り付いた重々しい扉を開くと其処には小さな小さな魔物。


「「可愛い…」」


小さな歩幅で一行に背を向けた彼等に対して呟かれたとパンネロの言葉は同時に響いた。


「……って襲ってくる?!」


──そう。見た目は可愛くても彼等は魔物。
フォーンで会った少年に退治を頼まれたモブとは今目の前に居る物で有ろう、とバッシュは呟く。
散開した彼等は各々に一行へと攻撃を加えて来た。


「チッ…コイツ等は纏まるって事を知らないのかね…っと!」


チョロチョロと動く魔物に愚痴を零しながら、手に持った銃で狙いを定め、トリガーを引く。
しかし、素早く動く彼等には銃弾は一切当たらず、バルフレアは苛々を募らせるばかりであった。


「バルフレア、私に任せて!」


後ろに控えていたがバルフレアの前へと躍り出ると、一匹だけに狙いを定める。
魔法と剣技を巧みに操り、確実に仕留めるその様は戦闘に慣れた者だからこそ出来る業。

が一番素早い魔物を倒し終わる頃、ヴァンとバッシュの連携で二匹同時に仕留められた。


「コイツ、待てって!」


仲間が倒される様を見、心無しか残った一匹は逃げる様に動き回る。
ヴァンは装備していた剣を振り回す様に其れを追いかけ、壁へと追い込むと一撃の元に葬った。


「やーっと終わったぜ」


こんなに走り回るなんて、と愚痴を零すヴァンが他の面子の元へと戻って来る。
倒された魔物達は各々に昇天し、広間は一気に静けさを取り戻した。


「さて、先へ行くぞ」


銃を背中のホルダーへと戻したバルフレアが先頭を切って、広間の奥の扉へと進む。
残ったメンバーもバルフレアに付いて行く様に歩み出した。





最後には亡霊と戦う事になったが、薄暗い空間を抜け、
漸く外界へと出る事が出来た一行の目の前に広がる景色はヴァン達が予想していた物とはかけ離れていた。


「…帝都って言う割には……貧乏臭いんだな」


真っ先に出たヴァンは建物の塀に座り込み、服に付いた埃を払い落とすバルフレアへと呟く。
バルフレアは小さく息を吐きながら塀から飛び降りたヴァンの横へと並ぶと、淡々と話し始めた。


「これも帝都の現実さ。この旧市街は市民権が無くて都市部に住めない奴等の溜まり場だ」


其れを聞いたヴァンとパンネロは遠くに見える建物の影へと視線を移し、暫く無言になった。


「"上"ってのはもっと綺麗なのか?」
「あぁ、別の意味で汚いがな」


そう皮肉を言ったバルフレアの表情は、笑っていなかったのをは気付いていた。

(…別の意味で…)

自分が知る限りの帝都を思い出す。
確かにラバナスタの様に、平和的でのどかなあの街の空気とはまるで違う"上"の区画。
一行は"上"へと続く道を進もうと、一度は止めた足を再び動かすと、
古ぼけた樽に座っていた男がニヤニヤとした笑いを浮かべ一行に視線を留めていた。


「…いやいや、何ともお懐かしい方がいらっしゃるじゃないの」


一癖も二癖も有る様な言い方をする男。
名はジュール、ケチな情報屋、という説明をしてくれたのはバルフレアであった。
も無論彼の事は知っていた。
何せ、二年前帝都を抜け出す際に多少の世話になっていた。


「そのケチな情報屋が役に立つ時も有るんだよねぇ」


ジュールの視線を追えば、警備員が道を塞いでいる。
全身を纏う無機質な鎧…は反射的に身を潜める様に踏み出していた足を一歩後退させた。


一行はジュールへとギルを渡し、見事な迄の芝居をし警備員をその場から離れさせる。
通れる様になった事に礼を述べるヴァンと終始渋い顔をするバルフレア。
その様をアーシェやフラン、バッシュは後ろから見守っていた。


「あそこに見える階段を上がれば…新市街だよ」


自然と己の体を影にして先程迄居た帝国兵に見えない様にしてくれていたバッシュとフランには告げる。
前に居るヴァンとパンネロ、バルフレアは既に歩き出していた。


「有難う、二人共」


フランとバッシュに微笑を浮かべて礼を述べたは足を進め出した。

(帝都……)

旧市街とは違う雰囲気を持つ階段に足を乗せた時、一行は一度だけ高くそびえる新市街の建物へと視線を向ける。


「……平気か?」


他の誰にも聞こえない様に自分へと言葉を掛けてくれたバルフレアに、はただ笑んで頷く事しか出来なかった。