─王都ラバナスタ。 国王の死から二年経ったこの街は今や、復興を続け一通りの賑やかさを取り戻しつつ有った。 先日、ヴェイン・ソリドールが新執行官としての演説を行い、街中はその話題で持ち切りで有る。 「一難去ってまた一難…とはこの事を言うのね…」 勿論、が居るこのバザー通りでもその話題は尽きず、 運営の手伝いをしていても何処からともなく聞こえて来るその話題にウンザリ、とは溜息を付く。 其処へ顔馴染みのヴァンが息を切らし、を呼び止めた。 「、大変だ!」 「…ヴァン?どうしたの?」 「パンネロが……ッ」 つい先程ナルビナ城塞から戻って来た筈のヴァン。 聞けば、パンネロがバッガモナンの一味に攫われた、と。 場所はビュエルバのルース魔石鉱。 しかしそれを聞いたは、整った眉根を寄せ声を顰める。 「でもね?ヴァン。ビュエルバ迄どうやって行くつもり?まさか旅客船で行くの?」 「いや、バルフレアに連れていって貰うんだけど…も一緒に来てくれよ!俺よりも戦闘知識は有るんだし!良いだろ?!」 「そりゃそうだけど……ってバルフレアって…空賊の?」 「そうだけど?」 「解ったわ……一緒に行く」 は近くに居た手伝い仲間に暫く出掛けて来る、と伝えるとヴァンと共に道具屋へと走る。 大袈裟に扉を開くと、ヴァンはミゲロに同行者の事を伝え、 は借りている部屋へと急ぎ足で向かい武器と簡単な防具を見に着け、ヴァンの元へと向かう。 「おぉ…、ヴァンとパンネロを宜しく頼んだぞ」 「えぇ、ミゲロさん。無事に帰って来るから待っていて下さい……では行って来ます」 どちらも焦りから急ぎ気味に言葉を交わす。 ヴァンと共に道具屋を出ると、こんな状況では少々鬱陶しく有る人の流れに逆らい走って飛空挺ターミナルへと向かう。 ターミナルの入り口で待っていたフラン─と教えて貰った女性はにチラリと視線を運ぶと中へ入る様に促す。 中へ入ると空賊バルフレアが人々に背を向ける様に立っていた。 近付くヴァンに付いていくとバルフレアは振り向きと一度視線を交わすと小さな溜息を吐く。 「お前なぁ……まぁ、良い」 言いかけたバルフレアの言葉に疑問を思いつつも、 ターミナルの内部へと後ろをついて行くと開かれた扉の先に白が基調の両可変の翼が美しいフォルムを描く機体が視界に映る。 「シュトラールだ。中々のモンだろう」 「凄いな!ホントに空賊なんだ!」 二人の交わす言葉は耳に入りつつも、シュトラールと紹介された機体をはジッと睨み付ける。 (コレは…試作機しか………でも少し違う様な…) 「?どうしたんだ?」 「ん?いえ…大丈夫、何でも無いわよ」 「行こうぜ?」 ヴァンに指差された方─ハッチが開いている場所へ足を向けながら、もう一度じっくりと機体を見渡す。 (やっぱり……コレは…) 機内へと入ると既にバルフレアは操縦席へと座っていた。 隣にフランが音も無く座り、二人で空路の相談をしている。 は落ち着かない様子で座ったヴァンの隣に座る。 「お行儀良くしてないと舌噛むぞ」 小さく頷くヴァンを見つめながらは言いようも知れない胸騒ぎに駆られる。 (嫌な事が起きなければ良いけど…) 得意気に操縦するバルフレアを視界の端に収めながら、 期待と不安、パンネロを助けるという思いを乗せたシュトラールは快晴の空へと飛び立った─。